日本の都市の未来をつくるために
提言1 持続可能な快適都市を目指す
都市は多様な主体が関わり、完成することのない作品と言われている。持続可能な都市を実現するため、時間の視点、空間の視点、そして人間の視点を大切にして、暮らしやすく誇りと愛着が持てるまちづくりを目指す。
提言2 地域の固有性を再発見する
地域の地勢・歴史・文化・経済の固有性や独自性を再発見することが都市を考えるための原点である。そして活動を育成・支援する空間づくりを積み重ね、地域固有の個性的な都市文化の再生を図る。
提言3 都市の現場から実践手法を生み出す
都市の質を上げるためにはアーバンデザインの力が必要である。そのためには従来の計画論や組織にこだわらずに、常に時代に相応した手法を探求することが求められる。まちの現場において、地域住民・企業・NPO・大学など多様な担い手が参画し、具体的な議論から生まれる実践的活動を大切にする。
提言4 アーバンデザインの研究分野を確立する
建築・土木・都市計画・地理・歴史・芸術文化などの分野は、社会動向に呼応するようにその領域や内容は変化し広がっている。しかし、それらを横断するアーバンデザインはまだ研究分野として確立されていないため、経験や情報を共有するための新たな学会の設立を目指すとともに、都市に関する実践について、ヒト・モノ・コトの情報を集め、知識の継続的な蓄積を図って、データベース化を目指す。
提言5 人間と組織のつながりをデザインする
アーバンデザインを実践するためには、デザインマネージメントや都市戦略に携わる多様な分野の協力連携が不可欠であり、人や組織を柔らかくつなぎ、新たな価値の創造が必要である。
また、次世代を担う人材育成のための教育・育成プログラムづくりを進めながら、誰にでもわかりやすく楽しいプロセスを構築して都市の質向上を図る。
提言6 知恵を結集する拠点づくり
地域のアーバンデザイン展開のためには、人や組織が集い、オープンに議論して情報を共有する場が重要である。現在、全国各地に生まれる「アーバンデザインセンター」が地域の固有性を生かしながら、今後は様々な花を咲かせるだろう。
各拠点が「連環」してムーブメントを巻き起こし、足元から全国的に魅力ある都市づくりが広がっていくことが望ましい。
提言7 国際的なネットワークで考える
変革の時代の都市の課題は共通と言える。世界には研究者や実践例が膨大にあり、課題解決を目指した世界的な知のネットワークから、21世紀にふさわしい人間居住を実現する。
定期的な国際交流の場として「世界アーバンデザインセンター(UDCW)」を提案し、世界の都市づくりの英知を集めていきたい。
私たちはこれまで日本にアーバンデザインが根付くために、アーバンデザイン研究体を組織して活動を行ってきました。21世紀を迎え、地球が一つとなって取り組むべき環境問題や社会経済問題が持ち上がっています。それぞれの問題はグローバルに関係付けられ、個々では解決できない状況にあります。それは都市についても同様で、都市の疲弊が顕著に現れ、「変革の時代」を迎えていると言えます。
日本は近代都市が誕生して約150年を経ていますが、明治以降の西洋文化の導入から始まる社会・経済が大きな構造転換を迎えています。地球環境問題が深刻化し、生活格差が広がり、これからの目標が見えにくくなっている中、将来にわたる不安を解消して「国民幸福度」を向上させることが大きな課題となっています。
2010年、日本におけるアーバンデザインの方向性について示したのが、上に掲げている7つの提言です。これまでの理論と実践の経験価値を活かしつつ、広範囲の領域を関係付けて結合する新たなアーバンデザインの理念に基づく研究・計画・実践が求められています。
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